氏は台北縣新莊市の人で一九二一年に生れ，祖先は中國の福建から台灣に移り定住されました。

父親の正德翁は麥芽糖の製造、販賣に從事，その道では專問と稱され，商賣繁昌し信用も卓越で業界於ける評判は極めてよく『麥芽糖の先輩』とも稱されていました。人となり敦厚篤實で識者は皆大へん崇敬していました。

母親陳氏は慈祥にして和氣靄靄，善行施捨を樂しみ，親戚友人は皆これを賞め稱えていました。六男一女を育て，氏は六男に當ります。

氏は幼少の頃から庭訓を承り，生れつき敦厚，聰明にして求學は勤勉そのものでした。新莊公學校に入學，卒業後台北工業學校電機科(戰後台北工專となり，その後改制されて現在は國立台北技術學院)に進みました。學校では品行方正，學術優秀，卒業後學校から拔擢されて助教として留用，その問校務に勵み學校から頗る器重されました。

序で中國の認識を深め，大陸を實地に了解しましたと考え教職を辭して，南京，上海及び廣東各地に參り終戰直前に台灣へ戾りました‧戰後間もない頃氏は兄達と圖つて『山岡機械行』を創立と改組，その後業務擴展の需要に鑑み『振興貿易股份有限公司』と改組，引き續き日本ヤンマ-會社の陸上，舶用のディ-ゼルエンジン。各種農業\機械及び日本大洋電機の發電機などの輸入を經營，本省農業發展の需要に供しました。

既に四十余年を經た今日，その業績たるや誠に卓然なるものがあります。この間一九七四年日本の大洋電機株式會社と合弁で鑄造專間工場『王大鐵工廠股份有限公司』を設立，一九七八年には日本ヤマ-デイ-ゼルエンジン株式會社と『野興機械工業股份有限公司』を興しコンバイン，耕耘機などの生產に從事しました。一九九0年に至つてさらに日本荏原製作所と合資で『台灣荏原電產股份有限公司』を創設汙水處理用ポンプ等を製造，國內工業の飛躍的發展に不滅の貢獻を致しました。

氏は一九七六年農機業界の先達と共同して台灣區農機工業同業公會(同業組合)を組織し，同時に最高票で初任の理事長に當選，その後つづいて第二任に連任されました。

又一九八0年九月には『王榮圳農機獎學金小組』を設立，農機關係人材養成の為全省の大學，短大及び農工業高校の農機部，科の學生に獎學金として每年四十余萬元を提供されました。

一九八0年には『王榮圳農業學術發展基金委員會』と改め原來の農機獎學金以外に農基研究人員及び全省各地の優秀な農民，漁民にまで獎勵の對象を擴大，そして今年からはこの委員會を『王榮圳文化基金會』と編制を改め，以て社會に酬ゆる範圍を更に擴げました。これからも氏が台灣農業界に拂われた心力が窺われます。

氏の人となりは正直にして道義を崇め學問的素養があり日本語、文に精通など皆の景仰する所でありました。
特に物事の處理には真劍で公正廉潔，思慮の周到なることなど人人から『良師益友』と云われています。氏は事業及び農機人材の養成に余す所なく盡力された外に，社會公益事業に對する熱心さも決して人後におちませんでした。全國の『好人好事』代表に選ばれ，內政部の褒賞を受けるなど枚舉に遑がありません。その主なのを舉げますと

• 一九七六年三月 全國商業總會優良商人獎章授賞。
• 一九七六年五月 台北市西區ロ-タり-クラブの資格の深い會員と してクラブのPAUL SARRIS FELLOWSHIP賞を授賞。
• 一九七七年九月 第二十三屆敬軍模範の榮譽を獲得。
• 一九八八年十二月 中華民國赤十字會博愛服務事業贊助。
• 一九八九年 教育部興學捐助獎章授賞。
• 一九九二年 全國『好人好事』代表の榮譽を獲得。